広島市中心部大規模PCR、専門家の声は 「感染減、費用対効果に懸念」「偽陽性での隔離心配」 | 中国新聞デジタル 2020年1月27日
広島市での80万人検査について、ニュース記事などでの批判は割と出てきています。
中国地方、また広島県内で圧倒的シェアを誇る中国新聞さんでもどちらかといえば批判的記事が多いようです。
広島市医師会佐々木博会長「予防への関心が低い人が受けないとすれば、感染を食い止める意味が薄れかねない」
広島市民病院安井耕三医師「今やるメリットは乏しい」「無症状の感染者を一気に把握し、隔離する手法には意味がある。今後の拡大に備え、いつでもできる準備をしておけばいい」
岩崎恵美子医師「検査対象の拡大は、流行が激しいときにするべきだ」
広島大大学院坂口剛正教授「偽陽性でも本人は隔離され、職場や家族も濃厚接触者として調べられる。影響は大きい」
医療関係者「検査結果はその時点の評価でしかなく、翌日に感染しないという保証はないことを知ってほしい」
記事中では批判的意見ばかりの紹介。実際に批判の声しか集まらなかったということでしょうか。
そうは言っても、批判の声の内容はビミョウといえばビミョウ。
佐々木氏の予防への関心が低い人が受けなければ意味が薄れるというのは、"気をつけてる人は感染しない"、あるいは"感染しにくい"という趣旨でしょうけど、受ける人が減れば意味が薄れるというのなら、逆に言えば大規模検査への賛成意見ということになります。受ける人が多ければ効果があるというのなら、広島市医師会の会長としては検査を受けてくれるよう呼びかけるべきでなのでは。(大規模検査の効果は認めるが医療体制確保や費用の面から反対する、というのはありえますが)
安井氏の今やるメリットというのはよく分からず。ワクチンを打てるのはまだ何ヶ月も先でしょうし、それほど感染がおさまったとも言えない状況は続いています。今後に備えて準備をしておけば、というのも呑気過ぎる感じ。
岩崎氏の「流行が激しいときにするべき」というのもよくわからない感じ。流行が激しければ感染者をどんどん見つけてどんどん隔離しないとさらに流行が広がるから、それを防ぐために大規模検査が有効ということではあるでしょうか。ですが、今回の新型コロナは流行が落ち着いてもすぐに再燃して急激に感染が広がるというのをすでに日本は経験したはずです。しかも何度も。また、オーストラリア、ニュージーランド、中国などでは感染が縮小した後もそれなりの検査数を維持していますし、一部で感染者が多く出れば中国などは1000万人規模の検査もすぐに行なっています。感染が縮小している状態で検査をすれば発見される陽性者も少ないので、医療体制への負荷も少なくなり、詳しい追跡をする余裕もあり、オーストラリアやニュージーランドや中国のように感染を徹底的に減らすことにもつながります。感染拡大が激しくなってから大規模検査しても遅いわけです(それでも、そういう時はそれはそれでやる必要があるわけですが)。
坂口氏の偽陽性の話も謎。テレビ新広島のニュース番組は、広島大学坂口教授によると…と題して、PCR検査は偽陽性が5%出るという"キャンペーン"を行なっています。坂口教授がそれに抗議した形跡は見えないことから、たとえ「仮」の話だとしても、坂口教授はPCR検査の偽陽性を5%で計算するようテレビ新広島側に伝えていると考えるのが妥当でしょう。この中国新聞の記事でも坂口教授は偽陽性を問題視しています。Jリーグでもプロ野球でも、全選手やスタッフを月1回とか月2回とか検査して昨年のシーズンを乗り切りました。演劇関係や映画撮影などでも週1回とか週3回とかのPCR検査は行われています。全国の高齢者施設や医療施設では職員や入所者らの全員検査も行われており、その規模は今年に入ってからも拡大しています。医療関係の学校では実習の前にはPCR検査を行えるようになっていますし、学生や市民に無料や格安での検査を提供する大学や自治体もいくつもあります。それらの検査で5%も偽陽性が出続けているのでしょうか?そんなことはないですよね?
広島大学で坂口教授が行っているPCR検査で偽陽性が5%発生しちゃうという実績があるなら話は別ですが、たとえば広島大学病院ではPCR検査を行なっており、渡航者のためのいわゆる「陰性証明」も出しています。そこで偽陽性5%も出てるのでしょうか?そんなわけないですよね。坂口教授ももちろんそれは知っているでしょうし、坂口教授の行うPCR検査でも偽陽性が5%も出てたりはしないでしょう。偽陽性がそんなに多く出るわけでないことを知っているのに、偽陽性が出るからといって大規模検査に反対するというのはホントに謎です。
医療関係者の検査結果はその時点の評価でしかない、という話も謎。そんなの誰でも知ってますし、それに文句があるなら、PCR検査で診断書を出してる広島大学病院などの医療機関に文句を言いに行けばいいのでは、とも思う次第。
大規模検査に対しては、謎理論での反対もよく行われています。
よくあるのは、検査によって無症状の感染者が多く発見されてしまい、彼らの勤める会社などでの仕事に影響が出てしまうというもの。検査をしなくても、彼らが感染者であることは変わりません。検査をしたから感染者になったわけではありません。
感染者の全てが他者へ感染させるわけではないにせよ、「感染力を持つ感染者」と「感染力を持たない感染者」を仕分けできるような検査もありません。Ct値の高い低いがウイルス量や感染力と比例してるともされますが、Ct値が高い=ウイルス量が少ないという場合でも、それが「これからウイルスが増え始める時期」なのか、「すでにウイルスが減っている治りかけ」なのかはわかりません。
また、感染の多くが無症状の感染者から起こっているともされています。無症状の感染者は見つけない方がいい、みたいな論に乗る理由がありません。見つけなければ、その無症状感染者のうちの幾人かが他の人に感染を広げることになります。
広島に限らず、また、感染拡大地域でも、感染縮小地域でも、きっちり検査は受けましょう。
PCR検査のコストも心配されがちですが、個人でも3000円程度でできます。保健所などが検査を受けさせてくれずとも、自分で簡単に検査はできます。キットを注文して受けとり、唾液を入れて返送するだけです。
昨年新型コロナが流行り始めた頃に、熱が出ても家で4日過ごすように、などと言っていた自称専門家らを100%信じる必要はありません。