盗用事件は作家だけの問題じゃないだろうに…
漫画家末次由紀さんが「
エデンの花」で、
井上雄彦さんの「
スラムダンク」の構図などを盗用したとして、連載休載・既刊の絶版や回収といった事態に。
井上雄彦さん以外にも実例が画像付きで挙げてあり、"ああ、たしかに"と納得。
検証サイトには、末次氏公式掲示板に投稿されたご本人の書き込みが保存されています。
「人の作ったもの」をどこまでモデルにして漫画の中に出していいのか、都庁は?街にあるオブジェは?かっこいいモデルがポーズ取ってる写真は?美しいテニスプレイヤーのプレー写真は?それらの線引きの判断が難しいと思うことは多々ありました。
他漫画のまるっきりトレースはたしかに問題ですが、写真なんかは、他作家も自分なりにインスパイア(爆)しつつトレースすることもあるんじゃないでしょうか。もちろん、書籍なんかの写真には著作権があるでしょうから、自分で撮った写真との間にもまた差異はありますが。
白状しておくと、僕はトレースこそしませんが模写はします。練習としてだけでなく、ネットに掲載するCGイラストでも。コレなんかがそう。ただ、スキルが低いので、元写真とは似ても似つかないワケですが(爆)。
それは置いといて(^^;)…
今回問題に思ったのは、なんつーか、"編集者の質"。
末次由紀さんが盗用したのが、どっかのグラビアの写真やらマイナーな漫画ならいざ知らず、「
スラムダンク」ですよ?
漫画で飯食ってンなら、気付けよ指数50000にゃろう!なカンジなのれす。(指数に意味はありません)
バスケネタじゃない漫画ならまだしも、もろバスケしてるやん。
末次由紀さんがペナルティを負うのは当然ですが(どの程度のペナルティが適正か知りませんが)、編集者やその上司あたりも同罪なのではないかと。まさか、「編集者も被害者だ」なんてことにはなっていないでしょうから、減俸ぐらいはされてるんでしょうけど。
「担当編集」という存在がどんなものか、僕は漫画でしか知りえないワケですが、チェック機構のヒトツでもあるワケですよね。
世の数多の漫画や映画や小説…全てを読んだり観たりするのはムリですが、それでも各ジャンルのメジャーな作品の概要ぐらいは知っておくべきでしょう。今回の件でいえば、同じジャンルのメジャーな漫画は熟読しときなさいよ、ってな具合(^^;)。
末次由紀さんが「
スラムダンク」から複数場面を盗用していることから推察するに、"
末次氏が「
スラムダンク」を所有し、参考にしていたことを担当編集も知っていた"と考えるのも、あながち的外れではないと思うのですが如何でしょう。
以下、余談。
「キン肉マン」では、有名な「重いものは速く落下する」というキン肉物理法則が確定していましたね。アレはアレで"キン肉マンワールド"の世界観を確立させた功労者ともいえなくもないのですが、それは結果オーライなだけ。一方では、編集者の質を露呈したとも言えるのではないかと思うのです。
たしか、業田良家氏の単行本でも、
携帯電話で話していた同士が出会った場面で、まるで携帯と携帯がダイレクトに電波でつながっているように見える描写がなされていました(そうなの?)。
昔買ったゲーム(KOF)の4コマ本でも、「青い炎の方が温度が高いんだよ」ってのと、「青い炎の方が温度が低いんだよ」という二つの異なる主張の作品がヒトツの単行本の中に臆面も無く同時に収録されていました(この炎の色の解釈に関しては両方とも間違い?)。
もちろん、たんなる揚げ足取りです。
ですが、それでもやっぱり、編集などのチェック担当者に対して、"気付けよ"と思わずにはいられないのです(^^;)。
フィクションなんだから細かい科学法則なんぞどうでもいいってのは真実です。その作品ごとに、異なる世界観や法則に支配されているのは当然だと思います。でも、"そこは外しちゃダメでしょ"な部分は、厳然として存在してるンぢゃないかと。
どっかで「他の作品を観ると影響されてしまうから観ない」という意見も読んだことがあるような気がしますが、作家はともかく、チェック担当の編集者はネタがかぶったりヒドい間違いが無いように多くの資料に目を通しておく必要(責任と言ってもいいかもしれない)がありますよね。
"編集者の質"が、巡り巡って今回のような「盗用問題」の根っこになったのではないかと、ムリヤリ先のハナシにつなげてオチとさせて頂きます(爆)。
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Comments
はじめまして。とある検索から飛んでまいりました。
冒頭の検証記事、この方って、以前「NANA」についても検証されてたような…
あなたの意見、うんうんって頷きましたよ。
本当、何のための編集者なんだよ?ですね。
あと、気になるのが、出版社によって対応に差があるってことですねー
「NANA」ニュースになりました?連載中止になりました?
少女漫画はLaLaしか読んでないので、わからないんですけど、何にもなかったような気が。
集英社、大手ですよね… 盗用された方、泣き寝入りでしょうかね?
Posted by: saint | 2005.10.19 12:52 PM
↑「NANA」ちがいでしょ?
それは同人サークル「NANA」のことですよね。
Posted by: ろんどん | 2005.10.21 02:34 PM
saint様、ろんどん様
コメントありがとうございます。
品川かおるこ盗作疑惑検証サイト【黒】
少しgoogleで検索してみましたが、矢沢あいさんの「NANA」に盗作疑惑がある、と記してるページは見つけられませんでした。
盗作疑惑をかけられている同人作家さんのサークル名もNANAなので、情報が錯綜しちゃったんでしょうか(^^;)。
NANA_WEB
こちらがろんどんさんが指摘されているサークルNANAさんの公式サイトみたいです。
同人誌を手広く販売している人気サークルのようですし、市販のアンソロジー本への収録も多数あるようです。
盗作疑惑検証サイトの情報が本当なら、かなり悪質っぽいですねぇ。構図盗用やトレースではなく、そのものズバリのコピーもあるみたいですし(^^;)。
Posted by: KEI | 2005.10.21 07:33 PM
編集者の質、同意です。
といいますか、末次氏は、同じ雑誌で連載していた、アニメ化にもなった「ピーチガール」の上田先生をたびたび盗用して問題になっていたのですが、上田先生が抗議をしても、同じ雑誌のせいかナァナァになっていた、という背景があるのです、
末次氏の担当が副編集長だ、という力関係もあったのかもしれません。
で、その末次氏の担当の副編集長様なのですが。
今回、全作品絶版という厳しい処置がとられたのは、末次氏が盗用常習犯だということもあるかもしれませんが。
ここまで講談社が厳しい処分をとったのは
末次氏が常習犯でたびたびパクリ問題を起こしていることもありますが
実は公式掲示板に書き込まれた末次氏の「謝罪コメント」が講談社を激怒させた原因じゃないかと…
末次氏は謝罪文のなかで
「講談社の担当は夏ぐらいからトレースの事実を認知していた。
が、連載をずらせないと言われ書き続けた」とコメントしてしまったのです。
担当(副編集長)は盗用を気付いていたでしょう。
しかしそれを公にしてしまった末次氏に飛び上がったでしょう。
編集部が盗用を隠蔽していた、となれば話は違います。
会社ぐるみとなってしまえば世間の批判は一気に矛先を変えます。
自演の後、掲示板閉鎖→公式サイトを丸ごと閉鎖となったとき。
彼女はトップページに「編集部と足並みを揃えるため、一時閉鎖」とコメントを出しました。
しかし、それも30分後にただの「一時閉鎖」へと変わりました。
編集部に勝手なことを喋るなと怒られたのだと思います。
Posted by: 編集者の質 | 2005.10.22 12:21 AM
こちらでは初めまして。
トレース問題は過去多数有りましたが、
絶版回収までなったのは、記憶に無いですね。
現代の漫画は作家と編集者の共同作業に近い(らしい)ので、漫画家だけの責任というのは無いと私も思います。
この件の経過は良く知らない(ニュースが出てからざっと見た程度)のですが、
ご本人の謝罪文?がキーかなという気はしてました。
なので、上のコメントの方の見方もあり得るかもと思います。
ちょっと穿ちすぎのような気もしますが。
ただ、個人的に思うのはトレースが全面的に悪となったら困る漫画家が多いだろうな、という事です。
漫画を構成する要素というのは、とても多いので何処かの部分を何処かから借りてくるのは当たり前の事でしょう。
ある意味、漫画家というのは素材を集めて一つの作品に纏める仕事なのでは、と思っているのですが。
最終的に問題になるのは、その作品全体としての質であり、そのごく一部が借り物だったとしても大した問題では無いと考えます。
往々にして見られるのが、借りてきた部分が浮いて(沈んで)しまっていて、読んでいて苦笑してしまうような作品ですね。あからさまに繋がりが変とか・・・
なお、今回問題になった作品の質がどうだったかは、読んだ事が無いのでノーコメントですが(^^;
この件に関するコメントで興味深かったモノです↓
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2005/10/post_94e4.html
個人的には、オリジナルを縮小再生産しているような作品が嫌いですね。この作者さんも電車男をイメージするような作品が問題になっているようですが(コレも読んでませんが)。
それでは、突然失礼しました。
Posted by: D-one | 2005.10.22 11:37 AM
>編集者の質様
コメントありがとうございます。
>「講談社の担当は夏ぐらいからトレース
>の事実を認知していた。
事実かどうかともかく、こういったことを書いてしまっては、にらまれざるを得ないですよねぇ(^^;)。
"編集者"という職種が、いったい何を基準に評価されるかとなると、やはり担当した漫画家の作品のヒット度合いになりますでしょうか。末次氏がパクり常習犯というのは知りませんでしたので、ますます担当編集なども共犯臭いなぁ…と、勝手な想像をふくらませております(爆)。
>D-one様
コメントありがとうございます。先日岡山で"城"を発見したのですが、やはり(笑)D-one様のところではすでに紹介されている物件でした。さ、さすがです(^^;)!
>ある意味、漫画家というのは素材を集めて
>一つの作品に纏める仕事なのでは
あ、なんかすごく納得できる説ですね。
藤子不二雄氏の「まんが道」とか見てると、絵物語(ほとんど全てのページに挿絵がついた小説)や映画、それに昔からの童話やおとぎ話などからのインスパイヤ(笑)が、創作の原動力となっていることが多いのに気づかされます。
竹熊氏のエントリ。付いているコメントも興味深いです。トレースと模写、独創性とパロディについてなど、考えさせられる内容です。
トレースと模写を区別することに"法的には何の根拠もない"という弁護士さんの意見は、たしかに納得できます。
プロ作家さんには独創性を発揮して頑張って欲しいものです~。
Posted by: KEI | 2005.10.26 07:35 PM