[コミック]「夕凪の街 桜の国」(こうの史代)
広島の原爆をテーマにしたコミック単行本です。「夕凪の街」「桜の国1」「桜の国2」という三つの作品が収録されており、一冊で完結する三部作となっております。
僕はこの単行本を夜寝る前に布団の中で読みました。仰向けに寝たまま読んだのですが、涙が耳の穴に流れ込んで困りました(^^;)。
この作家さんの作品は初めてだったのですが、なかなか凶悪な語り口ですね~(爆)。淡々として必要最小限でありながら、物語のテーマを盛り込みまくったモノローグや、日々の生活に没頭しつつもどこかに引っかかりを感じている登場人物たちのセリフ。リリカルに陥り過ぎない表現は、まっこと素晴らしい効果を生み出しると思います。
絵柄もこれまた凶悪。キャラの表情のひとつひとつがどれも魅力的。特に笑顔の良さは、まさに凶悪の極み。登場人物の喜怒哀楽に引き込まれまくりでひた。
僕自身広島に住んでいるので、物語のおおよそ半分…またはそれ以上を占める広島の風景に胸キュン(滅)したり。現在の風景と重ねつつ、これまでに色々見たり聞いたりしてきた戦後の広島の姿の移り変わりを想像しつつ、何とも言えないディープなトリップを味わわせて頂きました。
多くの文学・映画が、どこか"上の視点"から描かれているとも言えると思いますが、この物語では、登場人物の瞳が、こちら側と同じ高さにあります。読み始めて、"あ"と気づいたときには、すでに術中に。登場人物と一緒の生活の中、喜怒哀楽を共に体験していくことになります。
で、僕が泣いた理由ですが…うーん、まだちと説明がつかないカンジです。少なからず泣かせるための悲劇は用意されていますが、決して登場人物達に共感したことだけが泣けた理由ではないんですよね。物語の登場人物についてだけでなく、たとえば「はだしのゲン」のストーリーを思い出して泣いたり(ゲンの時代と平成をつなぐ作品だとも言えるやも)、広島から失われたり蘇ったりしたものを思い浮かべて泣いたり、戦争の中で生きた人々のことを想像して泣いたり…そんなカンジで、目の前のこの漫画以外の色々なことが次々と心に押し寄せてきたワケです。これもまたこの作品の力なのでしょうね。
ひとつ危惧を感じたのは、作者のこうの史代さんもあとがきで書いていたように、広島(&長崎)以外の人が原爆の惨禍について知識が不足しているということ。若い世代、しかも広島・長崎以外で生まれたような人たちは、この作品から何をどのように感じとるのでしょう。いらぬ不安かもしれませんが、そんなことを思ったりも。
戦争が終わったのがいつか知ってる?
広島に原爆が落ちたのはいつか知ってる?
何月何日何時何分?
原爆で何人が死んだか知ってる?
原爆症って知ってる?
原爆のきのこ雲の写真は見たことある?
原爆が落ちた後の広島の写真は?
焼け跡のバラックは?
焼け跡で市電が再開したのはいつか知ってる?
原爆が落ちて10年後の広島の町の姿を知ってる?
「良い作品は何の知識無しに見ても感動できる」とかゆー人もいるかもしれませんが、そーとも言い切れない場合もあると思います。戦争について原爆について、ちっとばかし予習をしてから読むべき作品だと思います。
ま、ひとまずはサラリと読んで、その後で勉強して、再度読み返すという手もありですかね。
そういえば、「映画化」と帯に書いてありますね。監督は黒木和雄さんだとか? 「父と暮せば」の監督さん…ということは実写か~。
アニメでやって欲しいのが正直なトコですが(ちょいベタ過ぎですがジブリあたりが無難ぽ)、これはこれで楽しみにしたいと思います。
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「夕凪の街 桜の国」の予習復習に、ぜひ広島においでませ♪
→関連エントリ 「ぴっぴら帳」こうの史代
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