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2006.05.09

「国銅」(上・下) 大仏マニア必読。大仏建立物語

 ゴールデンウィークの旅行に出かける前に、何か文庫本を買おうと思って本屋の中をブラついていたら、なにげにとんでもない仏…もとい、ブツを発見。

国銅(上巻) 国銅(下巻)

国銅(上巻)
国銅(下巻)
著者:帚木蓬生(ははきぎほうせい)
出版社:新潮社

 長門の国で銅を生産している人足(仕丁とも。徴発された労働者)の物語です。多少ネタバレ的になりますが、その人足がやがて都の大仏造りに送り出され、苦役の後に再び長門へと戻るというのがあらすじです。

"大仏萌え"な人種にはこたえられない内容です(爆)!

 基本的に、驚くような事件も起きず、ただ淡々と日々の労働と生活の様子が簡潔に描写されていくだけの小説です。

 だが、それがいい(^-^)。

"大仏建立"が一応ストーリーの核になっていることもあり、起こるイベントの一つ一つ、登場人物のやり取りの全てが、仏教法話…という堅苦しいものではないにせよ、示唆に満ちた印象深いものになっています。
 また、著者が医者ということもあり、人間の心身の描写がある意味冷徹でありながら、同時に愛情に満ちています。あの時代がどんなものだったかは想像することさえ難しいワケですが、僕には、著者が天平の世に、あえて現代的な優しさを贈ったようにも思えました。大変な労役であったろう大仏建立ですが、現代的な視点・倫理観が感じられる描写が救いとなっています。

 小説中では、銅の生産から、大仏の鋳込み、はたまた人足の移動などについて、緻密に描き出されています。ここが見所のひとつです。
 中でも圧巻なのが、旅の途中で立ち寄る場所で出てくる料理の描写。いえ、「料理」と呼ぶような大そうなシロモノはなかなか出てこないのですが、それもまたよし。醤(ひしお)煮や干魚、雑穀などなど。どれも味わってみたいものです。

美東町観光課ホームページ

 大仏建立に使われた銅が、山口県美東町周辺で採掘されたものだということは知っていましたし、美東町の道の駅などにも立ち寄ったりしたことがあったので、その意味においても、なかなか味わい深い小説でした。立ち寄った湊なんかの場所や道筋を想像するのも楽しいです。中国地方から関西、奈良方面の距離感を想像しながら、"行きて還りし物語"を楽しむ、と(^_^)。
 中盤からは平城京が舞台ですので、奈良を中心とした関西方面の方にとっても、より楽しめる要素があると思います。

 描写は淡々としていますが、上に書いたように温かみに満ちていますし、登場人物一人一人の個性も際立っていています。また、奈良大仏建立が一応大きなテーマには据えられているものの、あくまでもメインは主人公の愛と青春(笑)なのもポイント。登場人物は9割方がヒゲ面のおっちゃんですが、数少ない女性キャラやヒロインが、こーゆーとアレですが、けっこーオタク好みっぽいのも得点高いやも(爆)。

 今度はもうちょい勉強して、美東町周辺の大仏ゆかりの地を回ってみたいと思います。

 大仏を見に奈良に行くもよし、銅を送った長門地方に行くもよし、はたまた金の出た東北に行くもよし。…って、今なら簡単に山口にも東北方面にも行けるけど、天平の世で考えると、大変だったろうなぁ(^^;)。

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