[映画]あなたを忘れない ~ 予想以上のヒドさでした
日韓合作映画「あなたを忘れない」を観てきました~。
予想よりヒドかった部分もありましたし、予想に反して良かった部分もありました。
ストーリーに沿って、そこらへんをポイントごとに振り返ってみます。一度観ただけですし、劇場だったので巻き戻すワケにもいかないのでセリフ等細部はウロ覚えですがご勘弁を。
(以下、激ネタバレ。注意)
■ この映画は事実を基にしたフィクションです
映画本編が始まる前に、「この映画は事実を基にしたフィクションです」みたいなテロップが入る。
(*)「フィクションです」と言い切っているから問題無い? うーん、どうもビミョウなんですよね、この作品の場合。映画の基本テーマとして喧伝されているのは、「イ・スヒョンさんの真実を描く」ということ。こんな宣伝の仕方をすれば、多くの人は「事実を基にした」という部分に重みを感じるハズです。
「映画は映画として素直に楽しもう」という人ほど、この映画の狙いにまんまとハマることでしょう。"映画は何の先入観も無しに観るべき"…ちょっと聞けば正論のようではありますが、それも時と場合によりけりでわないかと。このことについては、下のほうでまた書きます。
■ スヒョンの祖父は旧日本軍の強制連行の被害者
兵役を終えたイ・スヒョン(ある程度時期を選べる?)は大学に戻る。彼は日本への留学を決める。日本への留学を決めた理由のヒトツは日本の歌に感銘を受けたことだが、スヒョンの父が日本の大阪生まれであることを知ったことも理由のヒトツ。スヒョンの祖父は戦時中、強制連行で日本に連れて行かれ炭鉱で働かされており、父もそこで生まれたのだ。
(*)伝家の宝刀「強制連行」いきなり登場。なお、スヒョンの大学のバンド仲間が「日本の歌を歌ったら観客がドン引きした」と言ってたのは、まぁ、予想に反して良かった点でしょうか。ただ、日本の教科書問題などのニュースを流し、韓国で日本が嫌われているのは、あくまでも日本に原因がある、とPRしているように見えないこともなかったワケで。
■ チンピラにからまれるユリを日本人は誰も助けなかった
東京の日本語学校に入学したスヒョン。毎日、自転車で東京を回っていたスヒョンは、路上ライブをしていたユリの歌を聞き惹かれる。スヒョンがユリの路上ライブを聴いていると、チンピラ二人が現れ、「俺らのハコでライブしろ。そうすれば、ここで路上ライブをやらしてやる」とユリ達バンドにからみ始めた。ユリは「私はあんたらのトコロでは歌わない」と、それを拒絶。チンピラ達と一触即発の事態に陥る。周りにいた日本人達は全て逃げてしまい、その場に残ったのはスヒョン一人。彼は軍隊生活で鍛えた技で(?)チンピラ二人を軽くあしらい、わざと逃げ出す。チンピラ二人は追いかけたが、スヒョンは軍隊仕込みのスタミナで(?)逃げ切る。
(*)遠巻きに騒ぎを見守るだけの日本人。たった一人立ち向かうスヒョン。いやぁ素晴らしい。
■ ユリの父親はスヒョンに対し「韓国人は嫌いだ」と言い放つ
ユリの父親の経営するライブハウスで、スヒョンはユリの父親平田一真と出会う。ぐでんぐでん(死語)に酔っ払って周囲に当たり散らす平田は、スヒョンが韓国人だと分かると、「韓国人は嫌いだ」と言い放つ。
(*)竹中直人のビジュアルインパクトは強すぎ。この作品でも、かなり浮いた印象。
■ ユリの友人ミルキーは、スヒョンを「イケメン」と認識
ユリとアパートで同居し、ライブも手伝っているミルキーこと岡本留美子は、スヒョンを見て「あのイケメン誰よ。紹介しなさいよ」とはしゃぐ。
参考:朝鮮日報 韓日合作映画『あなたを忘れない』、日本武道館でプレミアムコンサート
(イ・テソンの写真があります。韓国の新聞社のページは基本的に消滅しないのでベンリ)
(*)スヒョン役のイ・テソンがイケメンかどうかは評価が分かれるでしょうが、わざわざ「イケメン」というセリフが入れられているのがポイント。これを韓流タレントを日本に売り込むための戦略だと解釈するのは、まぁ、悪意が過ぎるでしょうが、大きな違和感を感じたセリフでした。
■ ユリ、アジア国際交流会で歌う
スヒョンの通う日本語学校赤門会(実在の日本語学校)の学生交流会に、ユリとミルキーも参加。その交流会の雰囲気にミルキーは「素敵」と感想を述べ、はしゃぐ。
舞台に上がったスヒョンは、ユリの曲をギターで弾き始める(こっそり練習していたらしい)。ユリは驚いたが、一緒に舞台で歌う。
参考:学校法人新井学園 赤門会日本語学校(公式HP(韓国語))
(校内?には「李秀賢記念公園」と名づけられた場所がある)
(*)赤門会(元は東大赤門前にあったとのこと)は、韓国人留学生が中心のようです(海外事務所はソウルと釜山にのみある)。「アジア国際交流会」と銘打って、チラシにはインド人らしきキャラも描かれていたように思いますが、映画内でも東南アジアやインド方面の人はいないように見えました。これは現実通り?
そういえば序盤のどこのシーンだったか忘れましたが、スヒョンの友人ミンスがベトナムの留学生と話した時、「韓国はベトナムと戦争したから嫌いだ」と言われたというシーンがありました。韓国軍がベトナム戦争に参戦したということは、おそらく韓国国内では常識なのでしょう。しかし、日本の一般ピーポーで、このことを知っているのは、ほとんどいないのではないでしょうか(知っているのは、おそらくネトウヨぐらいのもんでしょう)。その意味でいえば、評価できる貴重なシーンです。韓国軍のベトナム派遣は、自衛隊のイラク派遣のような後方支援ではなく、まさに「参戦」。ジャンジャンバリバリやっていたそうです。
ときに、ミンスは、この作品でもっともキャラが立っていました。「焼きたてジャパン」でいえば河内みたいな三枚目役でありがちなベタなキャラではありますが。
ベトナム戦争の混血児問題 韓越混血児(ライタイハン) - Wikipedia
韓国がベトナム戦争に参戦した際、韓国軍兵士や軍属の韓国民間人が「レイプ」「非管理売春」「現地妻を持ったこと」などにより、多くの混血児が生まれた。
99年5月256号ハンギョレ21 ベトナム戦 24周年にして見た、私たちの恥部, ベトナム戦犯調査委のおぞましい記録
韓国軍は残酷な大量虐殺を行ったため、南ベトナム民族解放戦線(NLF)さえ、できるだけ直接的な交戦は避けようとした程だったと伝えられる. 前線もなく、敵が誰なのかもわからないベトナム戦でベトコンの根拠地を捜索, 破壊するという作戦上の名分が老若男女を区別しない虐殺行為を正当化させた.
韓国政府はアメリカからの参戦要請を受けて、一九六四年、移動外科医療団とテコンドーの教官を当時の南ベトナムに派遣したのを皮切りに、ベトナム戦争と深く関わることになる。六五年からはついに戦闘部隊を送り込み本格参戦。七三年に撤退するまで、三一万人あまりの韓国軍兵士がベトナムに派遣された。
韓国軍がベトナム人女性との間に残していった子供達"韓越混血児(ライタイハン)"問題についても、やはり日本ではネトウヨ以外に知っている人はほとんどいないのではないでしょうか。この子供達の多くは認知されることもなく、ホーチミン市に設置された"ライタイハン専用"の養護施設で育てられたようです。
このライタイハンの総数については、ネットでの情報では数千人~1万人といった記述が多いようです。ベトナム戦争に派兵された韓国軍は、のべ約30万人。これらの情報が真実であれば、韓国軍は相当悪辣で残虐だと言わねばならないでしょう。
30万人が派兵されて、1万人の子供を身ごもらせてそのまま帰国。なんつーか、ありえな~い。どんだけ規律が乱れてたんだか。
■ スヒョン富士山に登り、そのまま大阪へ向かう
留学生仲間ミンスと共に、東京から富士山まで自転車で出かけたスヒョン。自転車から降り、サイクリング装備のまま(靴もサイクリングシューズっぽかった)富士山登頂を果たし涙を流す。ミンスは東京に戻ったが、スヒョンはそのまま大阪へ自転車で向かう。
(*)ちなみに、スヒョンはインターネットカフェと、ロッテの工場でアルバイトをしていました。ロッテはこの映画の協賛企業でもあるためか、映画内でも衛生的な工場の様子や作業員の綺麗な白衣を映し、なにげに「従業員一人あたりの売り上げが2億円を超えています」とか「ガムではアジア一の生産量です」みたいなセリフを入れてPRもしっかり行っていました。
また、日本語学校赤門会の卒業生だというビジネスマン(?)がスヒョンににこやかに話しかけていました。この映画を観たら、赤門会を頼りに日本に留学しようという韓国人学生が増えそうですね。
パンフレットには売国奴として有名な河野洋平の息子河野太郎衆院議員のエッセイ(?)も掲載されていました。そのエッセイの最後は、「日本に来ている大勢の"スヒョン"(留学生)をきちんと社会に迎え入れよう」みたいなカンジでしめられていました。
パンフレットには事故当時の新聞が掲載されていて、「富士山に自転車で登った」と書かれています。すげぇ(^^;)。
■ ユリ、名古屋で母と会う
ユリはスヒョンと連絡を取り、名古屋で落ち合う。ユリは、ミルキーと車で名古屋まで来たのだが、その車に自転車も積んで来ていた。ユリとスヒョンは自転車で大阪へ向かうことにする。
ユリは大阪へ向かう前に、名古屋のパチンコ店へ向かう。そこで働く母の友人(?)高木五月に会い、五月の経営する託児所で働く母史恵に再会する。ユリの父一真はリストラに遭って荒れてしまい、母は半年前に出て行ってしまっていたのだ。五月とユリの母史恵は、大阪に向かって出発するスヒョンとユリを優しく見送った。
(*)なにげにゴージャスで明るい雰囲気の名古屋のパチンコ店がアピールされていました。ちょいとやってみたスヒョンがあっさりと大当たりして、大量の景品をゲットしていたという。親切な韓国人店員も登場しました。
■ 大阪でスヒョンの祖父の知り合いと出会う
大阪鶴橋で、スヒョンは祖父の知り合いだった老婆と出会う(高さん?)。この女性は戦後を必死に生き抜き、一度は韓国に帰ったものの、「誰も喜んでくれなかった」として日本にまた戻って暮らしていた。
ユリとスヒョンは、北と南に分かれた祖国の話を聞き、大阪朝鮮学園などを見て回る。ユリは自分が知らなかったことを知ってショックを受け、日本人と韓国人、在日、みんなが一緒なのにとか何とか感想をスヒョンに話す(ここのユリのセリフ、超ウロ覚え^^;)。
スヒョン、スポーツを通じて日韓の架け橋になる仕事を目指すことを決意。
(*)韓国に戻ったのに歓迎されず日本に舞い戻ってきた在日がいる、という点がアピールされていたのは貴重かも。とはいえ、この映画に在日や朝鮮学園の問題を織り込むのは、なんだかトートツな印象を受けました。実際のスヒョンさんも、在日問題とかに熱心に取り組んでいたのですか?
■ ユリとスヒョン、自転車で伊勢志摩にまで足を伸ばす
ユリはスヒョンと共に名古屋から大阪まで自転車で走破したのみならず、さらには伊勢志摩まで到達するという驚くべき体力を見せる。
テントで夜を過ごす二人。それまで友情でつながっていた二人だが、旅を通じて絆は深まり、この夜、初めてキスをした。
(*)ユリは、長い付け爪してたりして大好きな見た目は女のコってカンジなのですが、たいして本格的でない自転車、しかもサイクリングシューズでもスニーカーでもなく厚底サンダルみたいなもので名古屋~大阪~伊勢志摩を走破するというのですから、ここらへんいかにも不自然でした。ノースリーブの軽装で大きなリュックを背負っているというのもスゴス。
伊勢志摩の風景はたんに綺麗な風景を映画に入れようという目的で使われただけであって、映画内で伊勢志摩に行ったという設定でわないのかもしれませんが。まぁ、名古屋から大阪までというだけでも凄すぎるワケですが。
■ スヒョン、ユリのバンド仲間を叱り飛ばす
ユリのバンド仲間風間はプロを目指して音楽を続けてきたが、なかなかうまくいかず荒れてしまう。酔ってユリの路上ライブを邪魔してしまう。スヒョンは、そんな風間を「甘えている」として、叱り飛ばす。
自分は韓国人で兵役にも行った。兵役に行くと自由は無い。だけど、お前は日本人だから、ずっと自由だった。甘ったれるな。
(*)厳しさと優しさと強さを兼ね備えた韓国人が、酔って暴れる情けない日本人を教え諭すという構図。そんな風に感じられるのは、考えすぎでしょうかね。ちなみに、この場面とか、ガイジン接待の場面とか、前後関係の記憶があやふやなのではしょってます(爆)。
■ スヒョンがタクシーにひかれたが、日本人は見て見ぬふり
友人ミンスと歩いていたスヒョン。スヒョンは自転車に乗り道路を横断しようとしたが、そこに走りこんできたタクシーにひかれる。タクシーのフロントガラスに叩きつけられ、道路に落ちるスヒョン。友人ミンスは、車を降りてきたタクシー運転手を怒鳴りつける。慌てていたタクシー運転手だったが、相手が韓国人だと分かると態度を一変させる。車に戻り、「何やってるんだ、早くしろ」と怒っている乗客への対応を優先させた。ミンスは、周りにいた日本人達に助けを求めるが、全員が「関係ないよ」と言って誰も助けようとはしてくれなかった。
スヒョンは心身ともに傷つき釜山に帰ったが、年末年始を家族と共に過ごし、再び日本へ旅立った。
(*)映画を観る前に、映画内のタクシー運転手の態度がヒドいというのは知っていました。しかし、タクシー運転手だけでなく、タクシーの乗客の態度もヒドいし、周囲の日本人4、5人に声をかけても全員が知らんぷりという念の入った演出。これがもし事実と異なっているのなら、相当悪質な演出だと言わざるをえませんよね。
作中には、日本人が韓国人を差別する描写が出てくるが、そのいくつかが非現実的なものであり、日本人を意図的に悪し様に見せようとしているという批判がある。特に、「交通事故を起こしたタクシーのドライバーが、ひいた相手が韓国人だからといってぞんざいな態度をとり、あまつさえ血を流す韓国人を置いてその場を立ち去るというのは、勿論フィクションであり、現実的にも韓国・朝鮮系経営者が多数存在するタクシー業界には、有り得ない事と言ってよい。
Wikipediaの項目も削除削除で大変なことになっているご様子。映画のパンフレットによると、スヒョンさんがタクシーとの事故に遭ったのは、2000年11月13日となっています。スヒョンさん関連の本には事故の詳細とか書かれてるんですかね?
■ ユリの父が韓国嫌いになった理由
ユリの父が韓国嫌いになった理由は、昔、ビジネスでトラブルがあったからだという(詳細不明)。
ユリ達のバンドはインディーズバンドフェスティバルの決勝大会出場が決まるが、父一真のライブハウスは倒産。楽器など全て失ってしまう。荒れていた一真にスヒョンは、「ユリが歌を始めたきっかけは、小さい頃歌を歌えば、ケンカしていた両親が笑顔になったから」だと告げる。一真は、韓国語でスヒョンに「ユリを頼む」と告げた。
■ シナリオのためにゆがめられた事故状況
一真がバンドメンバー風間のドラムを取り戻すなどし、ユリ達は決勝大会の会場で出番を待つ。バイトが終われば、スヒョンも駆けつける約束になっている。スヒョンはバイト先のインターネットカフェの店長(?)からパソコンの修理を頼まれ遅くなってしまったが、大会会場に向かうために新大久保駅に向かう。
駅のホームは人でごった返していた。スヒョンは、一人の酔っ払いとぶつかり、悪態をつかれてしまう。電車を待っていると、なにやら騒ぎが起こる。人がホームから転落したのだ。スヒョンが、人ごみをかきわけ騒ぎの場所に行ってみると、転落していたのは先ほどの酔っ払いであった。頭から血を流し、起き上がれないでいる。スヒョンは迷わずホームから飛び降りた。線路上にはもう一人救助に降りてきた男性がいたので、二人で酔っ払いを持ち上げようとする。そのとき、電車のライトが見えてくる。
もう酔っ払いを持ち上げるのは間に合わないと判断したのか、スヒョンは立ち上げり、列車が来る方向に向かって両手を突き出した。
rescuenow:災害検証レポート なぜ事故は起こったか - JR新大久保駅事故
ホームに飛び降りた時点で列車は80m手前まで差し掛かっていた。しかも運転士が異変に気づいたのが現場から40m手前だという。
70km/hだとすると、電車は1秒間に19.4m進むので、およそ2秒で現場に到達する計算になる。仮に非常ブレーキをかけても、2秒では手前で停止はできないし、仮に飛び降りた時点の80m手前で気づいてブレーキをかけていても、到達時間は 単純にその2倍の4秒となり、この場合も手前での停止は不可能だ。
どの程度信頼できる分析かは分かりませんが、上記のようなレポートがありました。綜合警備保障やNEC、それにニフティ(笑)などが株主の会社だそうなんで、まぁ、そこそこ信頼できそうではありますが。
それはともかく、ここでは上記のレポートをひとまず信頼してみましょう。
転落した男性を助けるためにスヒョンさんと関根さんが線路上に降りたとき、すでに列車は80mの距離にまで迫っていたそうです。つまり、救助に使える時間は、どれだけ長く見積もっても「4秒」しかなかったのだそうです。
ところで、「あなたを忘れない」のパンフレットに面白い記述があります。映画のプロデューサー三村順一に、事故の目撃者から"衝撃の事実"が書かれた手紙が届いたというのです。その手紙によると、「スヒョンさんが電車にひかれて亡くなる前の最期の7秒間、向かってくる電車に両腕を突き出し、止まるようにと懸命な合図を送り続けた」というのです。
(cache) 「シネマサロン」~フジテレビで映画を見よう~
この「7秒間」は、"逃げようと思えば逃げられた時間"として、スヒョンさんマンセーの根拠のヒトツとして、映画の宣伝にも使われています。
ポスターでも、スヒョンさん役のイ・テソンが両手を前に突き出したポーズを取っています。
上のレポートを事実とするならば、スヒョンさんに「7秒」という時間は残されているハズがありません。線路上に降りて、転落した男性を助け起こそうとしようとしただけで、おそら3~4秒くらいすぐにたってしまいます。
スヒョンさんが両手を列車に向けて突き出したことが事実だとすれば、それは反射的な行動でしょう。自分が電車なり車なりにひかれそうになった瞬間を想像してみてください。その時に取りうる反射的な行動は、逃げようとして体をひねったり倒れ込んだりするか、ムダだと分かっていて(というよりムダだと考えるヒマもなく)物体に対して手を突き出すことくらいでしょう。もし手を突き出した瞬間を目撃した人がいたなら、その人の記憶の中で「7秒」という時間が捏造されてしまう可能性くらいはあるでしょうけれど。
もし、この映画がヒットしていたなら、「スヒョンさんが両手を前に突き出したポスター」が映画館などに多く貼られていたことでしょう。そうなれば、この映画を観ていない人にも、手を突き出したポーズが強く印象づけられ、その印象が一人歩きを始めてしまう結果になってたワケで。そうならなかったことは、現実のスヒョンさんにとっても良かったなぁと安堵する次第。
(*)まだイマヒトツ確実なソースを見つけていませんが、映画内では大混雑していた新大久保駅のホームの状況が捏造だとの情報があります。映画内では、スヒョンは人をかきわけて現場に降り立ったものの、そのたくさんの人々は誰一人何も助けようとしなかったように描かれていました。しかし、実際には、現場付近にはいたのは、スヒョンさん以外は女性が3~4名のみだったのだとか。
夜の場面だったせいもありますが、関根さん役の役者さんは、暗い映像で見たら気づかないんぢゃないかとゆーくらい黒かったです(夜の場面ですし服も地味)。男性だということは何とか分かりましたが、年齢も何もかもよく分からないくらいの映像でした。この点も減点ポイントでしょう。いくらなんでも、この描写はちょっと…。
映画の最後に、「この映画を故・李秀賢さん関根史郎さんに捧ぐ」とかゆーメッセージが出た時も、なんだか違和感を感じました。転落した男性のことに思い至ったからです。映画内では、スヒョンとぶつかっておきながら悪態さえつくというヒドい酔っ払いキャラに仕立て上げられてしまっていました。人を助けようと線路に降りた二人と、酔っ払ってホームから転落した男性とでは、同列に扱うことは出来ないでしょう。ただ、なにもことさらワルモノ扱いする必要はないじゃないかと小一時間。わざわざ主人公と直接ぶつからせ悪態をつかせるという恣意的な描写が無ければ、「この映画を故・李秀賢さん関根史郎さんに捧ぐ」というシメに違和感を感じなかっただろうと思うのですが。
Yahoo!映画 - あなたを忘れない - 作品ユーザーレビュー 李さんが電車を止めようとした事実は無い
Yahoo!映画 - あなたを忘れない - 作品ユーザーレビュー 立ち上がって両手を広げたシーン
こーゆー点に関しての確実な情報は、もはやどこからも手に入らないっぽいですね。
特定アジアニュース: これが 『日韓合作』 映画? 関根さんの名がキャストから消えた!
公式サイトのキャスト一覧に関根さんの名前とその役者さんの名前があったのが、1月30日時点で消えてしまっていたそうです。コトの次第は不明ですが、まさに不審としか言いようの無い改変ですよね~。
もともと、関根さんのご遺族から了解が取れてない部分があったとかゆー情報がありますが、キャストに名前を載せるかどうかは、もっとも重要なコトのハズ。この点について、まさか関根さんのご遺族とキチンとハナシが通じていなかったなんてことはないでしょう。だとすれば、他の理由は?
ちなみに、パンフレットのキャスト一覧には「関根さん」は掲載されていませんでした。
パンフレットといえば、そこに掲載されているさりげない文章にも違和感を覚えたりもしました。
「おそらく、そのニュースを聞いた瞬間、多くの日本人が疑問を抱いただろう。なぜ韓国の青年が、命をかけてまで日本人を助けようとしたのか、と」
この疑問から、三村順一プロデューサーは映画製作を決意したのだというのです。
個人的な感想になりますが、そんなことに疑問を抱いた日本人は、おそらくほとんどいなかったでしょう。ですが、こういう文章は、巧みな誘導尋問みたいなモノです。"そう書かれると、なんだかそう思っていたような気がしてくる"といったカンジ。
パンフレットに書いてあったことで少しほのぼのとしたのが、花堂純次監督の韓国での撮影話。「正直、何度となく韓国が大嫌いになった」と正直(?)な感想が述べてありました(笑)。
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以上、大雑把にストーリーと思ったことをつづってみました。
ここまでで書ききれなかった、この映画の感想をちょっと記しておきましょうか。
個人的に恋愛モノは苦手なので、この部分では高評価はできかねます(爆)。バンド映画としてみた場合でも、色々な曲が出てきたので、どれが映画のメインテーマかハッキリせず、その点においてもモヤモヤした映画です。槇原某が曲を提供したというから、てっきりユリのバンドがその曲を歌うのかと思ったら、映画のエンドロールで槇原本人が気持ちよさげにふがふが歌っているだけ。
家族の絆を描いた映画として観ても、どうにも低レベル。韓国の家族はホントにあんなカンジで素晴らしいのかもしれませんが、それだと映画としてつまらないワケで。むしろユリの家族のほうが映画のネタとしてはマシ。でも、ベタ過ぎ。
スヒョンさんマンセーの映画として観るなら、むしろ低い評価をすべきでしょう。なんせ、実際のスヒョンさんとその周囲の人々や出来事をも捏造しているワケですよ。
スヒョンさんについての細かい情報が人々の記憶から(特に日本人から)消え去ってしまった今、この映画を観ただけで「スヒョンさんって素晴らしい!」と信じ込むことは、かえってスヒョンさんに失礼です。
まぁ、フィクション・ノンフィクションのことにこだわらなければ、「とりたてて特徴もないけど綺麗にまとまった映画」という評価は出来ないこともないですけどね。
(cache) 映画「あなたを忘れない」【映画に登場した魂のアーチネックレスや、イ・テソン、マーキーの関連グッズ販売してます。】 あなたを忘れない オフィシャルグッズ販売店
ちなみに、映画内でスヒョンがユリにプレゼントしていたペアのネックレス。最初から商売のネタとして作られたアイテム。実際のスヒョンさんも恋人にネックレスをプレゼントしていたのでしょうか?
(映画に出てきたネックレスのデザイナーMasahide Itoは2003年から活躍とのことなので、2001年に亡くなられたスヒョンさんとは接点がありません)
この作品の収益の一部は、エルエスエイチアジア奨学会(李秀賢顕彰奨学会)に寄付されるそうです。
アジアから日本への留学生が増えるということでしょうか。
とりわけ、最近、偽変造旅券を使用して入国し不法に在留していた外国人の検挙事案と正規の在留資格を取得して入国してきた研修生や留学・就学生等が失踪し不法就労している事案が多発しており、それらの背後には、偽造ブローカー、国外送り出し組織、国内での引き抜き・職業斡旋ブローカー等犯罪組織の暗躍がみられました。
【事例1】
埼玉県警察では、東京入国管理局と連携し、平成16年3月、東京都内で日本語学校を経営していた会社役員を有印私文書偽造・同行使罪他8件で送致するとともに、関連被疑者9人を有印公文書偽造等で検挙し、25人を出入国管理及び難民認定法違反(不法残留等)で入管収容しました。 本件は、同会社役員が、偽造文書を行使して大量の中国人を違法に呼び寄せていたもので、その手口としては、就学生を偽装、稼働先を偽装、家族滞在を偽装、短期商用ビザの不正取得、偽装結婚等多岐にわたり、現在まで判明しているだけで1、400余人の不法入国(企図者を含む)、在留に関与したことが確認されています。
日本語を学び日本との交流を志す外国人留学生は大切な人材。また、実際問題として、日本各地の観光地にせよ、大学などにせよ、外国人なしには成り立たない部分も多々あるワケで。
とはいえ、たんに日本に来るハードルを下げることが、本当の交流につながるのか。
("日本の観光地は外国人なしには成り立たない"とは書きましたが、後で調べてみると、外国人観光客の割合は地域によって差があるようで。先日、広島の呉を訪れる外国人観光客1万2000人のうち、韓国人は3000人強とゆーハナシを聞きました。多いように感じますが、呉の観光客数は158万人(平成16年)。158万人のうち3000人。ビミョウ…ってゆうか、微少? ちなみに、広島県全体の観光客は年間約4000万人。このうち、外国人は40万人弱。5割を欧米人が占め、アジアからの観光客は約9万人だそうです→参照)
鳴門教育大の中国留学生12人が所在不明 - nikkansports.com > 社会ニュース
留学生を20人受け入れたら、12人が所在不明になったり。どないやねん。
あと、日本で労働力として導入が広がる「中国人研修生」なんてのも、給料を毎月本人に全額渡すことはありえないのがフツーだとかゆーハナシも聞きます(全額渡すと逃亡される恐れがあるとか)。
中国人・韓国人による犯罪が増え、顕在化してきているのが今現在の状況。
どうも腑に落ちないワケです。
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このエントリの一番最初のほうで書いたように、この映画を「何の先入観も無しに素直な気持ちで鑑賞する」ことを僕は危険視します。
"危険視"だなんて大げさですか? では、想像してみてください。この映画を、日韓の諸問題も新大久保の事故のことも知らない小学生あたりに観せたら、どういう思想を植え付けることになるか。
竹島は韓国のものです…在日韓国・朝鮮人の方の施設への課税は免除すべきです…日本の税金で外国人留学生をどんどん呼ぶべきです…日本入国のためのビザは不要です…韓国人が許してくれるまで何度でも謝罪と賠償をするべきです…外国からクレームがつけば日本の教科書の内容を即刻変更すべきです…在日の方は全て強制連行の被害者です…外国人も日本の政治に参加出来るのが当たり前です…等々
オトナたちは映画ヒトツですぐ「陰謀だ!」とかあーだこーだとうるさいけれど、小学生なんかは、ピュアな心で何の先入観も無しに素直に鑑賞して、そこから色々なモノを学び取ってくれることでしょう(苦笑)。
小学生に対してではありませんが、この映画を見て憤慨していた僕は、ネットもほとんど見ない上に「嫌韓」というコトバも知らないような知人に対して、ついつい愚痴をこぼしてしまいました。"この映画では、日本人がヒドい描かれ方をしている!"というカンジで。その知人は、「さすがに日本人もそこまではヒドくないだろう」と、僕のハナシに一定の理解を示してくれましたが、「でも、日本は韓国にヒドいことをしてきたんだから何も言えないよね」と言っていました。
この映画が持つ悪質な一面を垣間見た思いで、ゾッとしましたよ。
「日本人はヒドいことをしたんだから、韓国人の言うことは何でも聞くべき」「韓国人が言うことは何でも正しい」だなんて意識が日本社会に蔓延する(させられる)。それって、"日韓友好"と呼べるのですか?
--
そうそう、最後に、関根史郎さん役の役者さんのページへのリンクも張っておきましょう(魚拓ですが)。
(cache) Actors Office [ 俳優 ] 大嶋守立 おおしまもりたつ
大嶋さんに失礼な言い方にはなりますが、もし関根さん役に有名俳優を起用していたら、どういう展開がありえたでしょうか(出番は短くとも重要な役ですから、ありえない演出ではなかったハズです。それこそ竹中直人とか)。少なくとも、関根さんにもっと脚光が当たっていたことでしょう。
この作品はイ・スヒョンさんに焦点を当てているので、作品のテーマが薄れてしまうことになるワケで。コトの善悪は抜きにして、これもヒトツの演出と言えるかもですね。
関連:
■総合
(5点満点中1.64点) (2007年2月14日時点)
■イメージワード トップ3
1 絶望的
2 不気味
3 恐怖
バロスw
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Comments
レポートお疲れ様です!
それにしてもKEIさんは律儀な方ですね。うっかりこの映画に言及してしまったがために、劇場まで足を運ぶハメになりお気の毒です 。゚(T^T)゚。
そういう言う私もKEIさんの背中を押してしまった一人なのかもしれませんが・・・
今頃申し上げるのも変ですけれど、KEIさんみたいな良い人は なるべく特定アジア関連に近寄らないでおかれる方がいいですよ(;^ω^A
精神衛生上、とぉおっっっても悪いですし、清らかな感性が蝕まれてしまいますから。
Posted by: モモたん | 2007.03.12 03:30 AM
>モモたん様
コメントありがとうございます。
いえいえ、この映画を実際に観ることで色々学べた…というと、ちょっとアレですが、得るモノはありましたし。
特ア関連にはなるべく近寄らないようにしたいのですが、今回のこの映画のように、どうにも見過ごせないモノもあったり(^^;)。
日本のマスコミが、タブーを持たずに特ア関連ネタをきちんと報道してくれれば、精神衛生上の問題も生じないんですけどねぇ~。
Posted by: KEI | 2007.03.14 08:29 PM