原発事故による汚染が震災からの復興を妨げている
東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)は東北地方を中心に各地に大きな被害をもたらしました。
地震と津波、原発事故による放射能汚染により、特に岩手県、宮城県、福島県の3県では多くの住民が避難生活を送ることになりました。
原発事故は、その避難生活を長期化させ、さらには帰還を困難にしていると思われます。
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の被害状況と警察措置(平成28年12月9日 警察庁緊急災害警備本部)
岩手県 死者4,673人 行方不明者1,123人 建物 全壊19,507戸 半壊6,568戸
宮城県 死者9,540人 行方不明者1,232人 建物 全壊83,000戸 半壊155,129戸
福島県 死者1,613人 行方不明者197人 建物 全壊15,194戸 半壊79,597戸
それぞれの県が大きな被害を受けていますが、地震と津波による被害は宮城県で顕著であることがわかります。沿岸部にどれだけ多くの人口がいたかどうかに左右される部分ではありますが、兎も角、宮城県での被害が大きかったことは明らかです。
平成24年3月時点の避難者数
岩手県 県内42,789人 県外1,578人 計44,367人
宮城県 県内127,792人 県外8,483人 計136,275人
福島県 県内97,946人 県外62,831人 計160,777人
平成28年3月時点の避難者数
岩手県 県内21,687人 県外1,426人 計23,113人
宮城県 県内45,672人 県外6,333人 計52,005人
福島県 県内53,983人 県外42,801人 計96,784人
避難者数も自主避難者をどうカウントするかなどで数が異なってくるようですが、ここでは復興庁の数字を引用しました。
建物損壊戸数は宮城県が83,000戸 半壊155,129戸、福島県が15,194戸 半壊79,597戸。福島県の建物損壊率は宮城県の三分の一ほどの水準ですが、避難者数は福島県のほうが多くなっています。
また、宮城県から県外へ避難された方の数は8,483人ですが、福島県から県外へ避難されたのは62,831人となっていることも、今回の震災のダメージが特異であることを示しています。
岩手県 帰還率 約48%
宮城県 帰還率 約62%
福島県 帰還率 約40%
元の住居などに帰還できた率が福島県で低いことも顕著です。
今村雅弘復興大臣 震災の自主避難者に「故郷を捨てるのは簡単」と言及
今村雅弘復興大臣が福島県の避難者を念頭に「故郷を捨てるっていうのは簡単」と発言したことが話題になっています。また、「戻って頑張っていくんだという気持ちを持ってもらいたい」とも発言しています。
もちろん、今村大臣が「時間との勝負」と言っているように、時間がたてばたつほど避難先などに生活基盤を築いて帰還しなくなる人が増えることは事実でしょう。
しかし、今村大臣の発言は、「帰還しない人への支援を打ち切る」という意味にしかとりようがないわけです。今村大臣の真意がどうであろうと、一連の発言はそういう意味にしかなりえないわけです。
今なお汚染がひどく残る地域というのは、これから先何十年も汚染があまり減らない地域でもあります。(福島第一原発事故では半減期の短いセシウム134と半減期の比較的長いセシウム137が同程度放出された。なので、最初の数年でセシウム134は大きく減り、それに伴い線量も急速に下がったが、これから先はセシウム137が多く残っているためなかなか線量は下がらない)
全国で原発の安全審査が進んでいますが、福島第一原発自体も核燃料が残っていますし、汚染物質も多量に集積されていることを忘れてはなりません。福島第一原発は、今はとても安全審査に通らない状況ですが、災害やテロに見舞われれば、再び核災害を起こす可能性のある施設でもあるのです。
どれだけ国が帰還政策を進めようとも、汚染が残り、生活インフラは途絶えている町にどれだけの人が戻るでしょうか。
国の施策は「支援打ち切り」に象徴されるように、国の意向に従わない者を切り捨てることが目的となっていきます。
津波対策などが進み、岩手県や宮城県では故郷への帰還をする方も増えることでしょう。もちろん、それも簡単な道ではないにせよ、希望ある未来は描くことができます。
しかし、東電による核汚染に見舞われた福島県においては、まだまだ厳しい道筋しか見えません。
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